畷の石(ナワテのイシ)
あらい

 露出した涅色の空に、金平糖にもなれず流される星屑だろうか、今年も拾い集めては又恙なく過ぎていった。
 これは芽を摘むもの、握り潰すこと、さんざん同じことを忠告する御神籤のご利益でできる。鶸色の喘ぎ、掬えないオアシスにマイマイ、殻を被り巣ごもりする春こそ、無駄に溺れ助かるすべもないほどの平穏であたる。
 しかし何故ないているのかの青海にスケイルをあて未来には朱線で加工する、顔があり、いまに酷く喉が渇き、そこまで手が出るが既に擡げたまま萎えていく焦香、くだらない星占い。寒風はまだ蚊帳の外でありたいのだ。
 いまどき流行らない伝言ゲームの文字列、ブラインドの降りた無意識という名の責務に止めることもできない。囲われる安泰を呼び込むPC周りは埃がひしめき合うが、所詮酔いにご機嫌のごっこ遊びに命綱を繋いでいる。
 しんしんと降りやまぬ初雪を望んでいる銀色の犬になりたかった。からはじまるたわごと。だれのことだろうかとモザイクがかけて。浮ついたままかさついた手で縋っては大事にされる記憶があるがなぜか破れてしまう。
 視界をサプリメントと鎮静剤で補い期限切れのワセリンで保護しているエラー音。何処か消え失せる満足感、肥え太るだけのからだはどこへ往き何処へ向かうのか、終いが見えればそれで夢は冷める、投げ出された身などもうどうでもよかった。
 何も見たくない聞きたくない、今にして今に思えない、薄墨のパズルは最後の一枚を失くしたのだとわかっていた。何を信じ何を愛すればその日その日に、楽に死ねるのだろうか。躓いて転ぶことを恐れ怯えていながら、解放される余暇に転がって動こうともしない。
 作りかけた星型八面体のこころを解いては捨てる。
 それでもまたいちいち養生テープで修復措置をせねばならないほど、頼りないくせに頑丈でとうに壊れているが、揺るがないものでしかない。残念なぬくもりを抱き寄せてしまう。

2021年12月


自由詩 畷の石(ナワテのイシ) Copyright あらい 2023-04-23 12:44:40
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