喜びの詩
由木名緒美
君のハミングが流れる窓辺に
小鳥が一羽、舞い降りて
オペラのソリストのように
ピィーと一声鳴いた
その春の景色を
時間のラッセルで描きたい
奇跡のような風景は
生涯に一度しか出会えない
黄金色の刺繍となって
記憶の糸に縫われていく
たった今の約束
明日には忘れてしまう指切りは
繋いだ温もりを破りくなくて
何度でも伝える誓いの言葉
晴れ渡った空が届けてくれる
公園で食べた地球の大気は
蟻さんの命と太陽の遠さが
草の背比べに見守られて
心もお腹もいっぱいになった
君の言葉を握り締めて
僕は美しい夢を見る
「おやすみ」に付された暗号が
うさぎの絵文字以外の何物でもなくても
僕はダ・ヴィンチ・コードよりも深淵な謎解きに耽るよ
だからおやすみ
優しい夢を見てよ
悲しい夕陽に足を止めても
喜びの詩を綴れば、ほら
輝いていく
ありふれた象徴
星の欠伸
宇宙はいくつ存在するの
君の暗号を解き切ったら数えられるかな
今夜こそは、きっと。