櫻坂
本田憲嵩

見交わす、
立ちのぼる、
瞳の中にまるで陽炎のように揺らめいている
うす紅色の櫻の樹木
強い追い風に吹きつけられながら
一匹の猫が
民家の塀を
豹の速度で駆け上ってゆくさまが見える
掠るように衝突された櫻の枝の花びらが
ヒラヒラと
宙へと舞い落ちてゆくさまが見える
そのキラめき その奮え
いつだって、そのように、
言葉を追い越してゆく
一瞬の流星
ぼくたちは、いま、もっとも生きている、ということ、
立ちのぼる
行間、という名の揺らめく櫻の樹木を感じながら
ぼくたちは、いま、初めてのキスを交わした、ということ、



自由詩 櫻坂 Copyright 本田憲嵩 2023-04-15 01:36:39
notebook Home 戻る