某
あらい
どうしようもなくおかしくてしょうがないのだった
この夜行列車のラヂヲ放送は今夜も
「鈴のように転がる姿を見たことはなかったが…』からはじまり
軽快なステップを踏み越えて
明日の天気や今日あった事件
地方におけるほのぼの動物の生誕を
そういった心情のこもったアナウンスが
遠からず近からず距離を置いて
瞬く間に流されてつづけている
外は星降る雨に滲んだ海底を蛍火を散らしながら
思い出を引きずっていくような仄かな熱だった
窓を震わせるのはどうせ誰か何かを悼んでいるのだろう
今日はまたへばりつくような夏の香りを
硝子の青年が、
なみなみに継いで持ってきたものは
それを斜めにしゃんと座る
狐面の親子が細い指でそっと摘んで覗き込んで
その砂糖菓子は冷ややかな氷を固めたものを
細かく裁断した、余所行きのタマシイであったが
闇色のほしくずたちがたっぷりとしたベールで
少しずつ抱き込もうと必死にちいさくなった、
あぶくでは、
伸びたり縮んだりを繰り返しながら
過去と未来を縫合していく
本記事はどこか腑抜けた文字列を栞にしているのだが
夢枕に立つはずのあの日の子どもたちが、
気ままな夏休みへと旅立ってしまったようで
ボクはそれに追いつくように、
乗り込んだはずだったのに
いつまでも変わらない風景を望んでいて
どうしようもなくおかしくてしょうがないのだった