甘い粒たち
由比良 倖
1
ホワイト・ストライプス
赤と白の縞々
罠じゃないかと思うほどの幸福
空に掛かった旗
揺り椅子
針金の椅子
遺伝子で織られたクッション
コンクリートのブロック
2
目を瞑ると
あまりに生々しい
僕たちの人形劇は
人形を人形と見ることから始まる
この世に人形があり
人形が人間の理想形として作られたならば
人形がそんなに見詰めるので
見詰め返している僕は何者だろう?
3
音楽が恋しい
窓に積もる花びら 落ちる 落ちる
本にも フィギュアにも 積もっていく
午後五時のチャイムが鳴る
映像は 僕たちの眼に親しい
けれど僕は暗い印刷の中に逃げる
日本語、英語の中に
このまま
繭に包まれて眠りたい
4
消えないインクのにおいが好きです
星々のあの藍色は
とろりとしていて
ドット絵のように光る
闇を小さく、潰す、
向こうで
文明がふたつに割れた
瞼の裏側で、海が
零れていく
ここは裏側です
消えない、
インクのにおいが好きです