少年癖
ただのみきや
神の可視化
行為としてではなく内なる皮膚の芽吹きとして
肺呼吸を強制された魚だった
光の泡がはじけていた
見晴らしのよい死者たちの丘で
まとう心象もなく声はすぐに散ってしまう
親しいものを探したがそれは星のように遠く
孤独とへその緒でつながったまま
ぽとりと落ちる 眼孔に
もう熱くない花首が敷き詰められた夜
記憶は塗りつぶされる
扇子を閉じた手の白い陰影に
*
音楽を聴いている彼女は炭酸水の人魚
美の連続体を前に脳は蜜を孕んだ
落雷で裂けたこの樹の根本にことばが埋っている
イメージが芽吹き 比喩はうそぶく
殻の中のイカロスは老いることがない
ピリオド──落下点を見出すことも
わたしは詩の中で何度でも目を覚ます
(2023年4月2日)