憧れの瀉血
坂本瞳子

瀉血に対する憧れは
その響きと
書くには難しそうな漢字と
血の生臭い鮮やかさが
感じられるからであろうか

一昔前の浪漫さえも感じられ
心のもっと奥の方から
じわじわと地味に沸き立つようなものが
蓄積されて欲求の塊と化し
押し寄せてくる予感さえ
夢見心地が誘われ

注射針の鋭利さと
白衣の清潔さが混じり
鮮血が重なる絵が見える

軽い貧血を伴って
気が遠のいていく感覚
目眩さえも引き起こされそうな
あともう少しで気を失ってしまえそうな
弱々しく
虚弱を体現するかのごとくに弱々しく
赤い血を見て頬を高揚させて
気が安らいでいく
そんな瞬間を
夢に見て憧れをまた募らせている
そんな気がする


自由詩 憧れの瀉血 Copyright 坂本瞳子 2023-03-11 00:20:27
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