ノンオイル
ゼッケン

環境が先か? 進化が先か?
もちろん、進化が先だ
陸に打ち上げられてしまった後で
魚が肺を身につけられるだろうか?
環境を変えれば進化できるなどとは寝言だ
進化しなければ環境を変えられないのだ
そして環境を変えられなければ進化は無駄だ
肺は深い海の底では無駄だ
浅瀬まで肉鰭で這い登らねばならない
やがて、予兆が訪れる
それは海底にはなかったものだ

朝の光と月の引力
寄せて引く波

おれたちだって予兆は感じている、いま、
太陽がフレアを吹き上げている

だが、出現した光の周期的な変動が肺を備えよというメッセージだと、
海面はもうすぐ過去の限界となる、
眩しさはその先に行けるという啓示だと
理解しえた者がいただろうか
答えは肺だ
無駄を備えていたものだけがその先に行く資格がある
効率を唱えていた連中はいまも効率よく大洋を回遊している
そして効率よく缶詰になってスーパーの棚に並ぶ
おれは缶詰が好きだ
いくつも積み重ねられる規格化された姿を美しいと思う
だが、誰も答えを知っているものはいない
缶詰がいつの日か肺を備えることを願う


自由詩 ノンオイル Copyright ゼッケン 2023-03-06 00:14:20
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