夜明け前の朝
山人

すべてのものが露わになる前の世界
夜明け前の朝は、そうした匂いが感じられ
鳥は瞼を微動させて小さく羽毛を震わす
風は樹の洞に仕舞われて
リスの鼓動がすこしづつ増してゆく



時を軽くカップに入れてかき混ぜて
あまり熱くない湯を注いで待つ
身近な何かがするりと剝けて
少し艶のあるものが現れてくる



朝は夜明け前を選んで読書する
何かが微風に揺れて
だれかの皮膚のすき間から
体の中に入り込んでいくのを見ている


自由詩 夜明け前の朝 Copyright 山人 2023-03-03 05:31:43
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