アイソニアの騎士の焦慮(四)
朧月夜
「では、一つの情報があります。騎士様。わたしが、
どこからこの情報を得てきたのか、ということはお問いになりませんことを。
イリアス・ナディは、このカラスガラの北方にある、
バルケスの塔というところに幽閉されておいでです」
そのヨランの言葉は、一つ一つアイソニアの騎士を試すかのようであった。
「バルケスの塔? それはいかなる場所か?」
「生きる者にとっては、恐ろしい場所です。なぜなら、
そこでは、生きること以外に何にも保証されていないからです」
「生きながらに、死人の心持ちを味わうということか?」
「まさにその通りです。この情報を得たときには、わたし自身も
生きた心地がしませんでした。この場所は恐ろしい場所です」
「ああ! イリアスがそんなこの世の地獄にいるとは!
それに比べて、俺はどんなにか楽をしていることか!
俺は今、この身の愚かさを嘆く! そして、この身の無力を嘆く!」
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩