祭祀クーラスとエインスベル(五)
朧月夜
そこで、それまで黙っていた、リグナロスが口を開いた。
「祭祀クーラス殿。あなたは先日まで、暗殺者の手に狙われていたのですよ?」
それは意外な答えだったのかもしれず、祭祀クーラスは心持ち顔を青くした。
(誰が裏切り者だ? フランキスか?)
「貴方が心のなかで考えていることは、多分あたっております。
というのは、今でもわたしたちが生きているからです。
多分、その裏切り者は貴方のことも、踏み台と考えているのでしょう」
「馬鹿な!」祭祀クーラスは地団太を踏みたそうだった。
「戦争というのは、馬鹿な考えを引き出すものだ。一見不可能と見える野望や、
同僚や上司、部下の追い落とし、勲章を引っ提げての昇進。
狂気に駆られた人間は、何をするか分からない」と、エインスベル。
「それは、お前の反省を元にしての発言か? しかし、それは遅すぎた」
「わたしたちは、一蓮托生の身だと思ったほうが良いでしょう、祭祀クーラス」
「うるさい! 衛兵はいないか? 衛兵を呼べ! 不審者がここにいる!」
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クールラントの詩