澱み
リリー
何時なのか
知るつもりもなく
近すぎず遠すぎもしない
道路工事の音が耳に心地よい
薄地なカーテンシェードで遮られた
街路灯の漏れ込むワンルーム
あそこの窓が
月明かり映る海面ならば
敷かれた一枚のシングル布団は
透明度高い海の底
身の隣り合う彼の眠りは深いのか
抱きしめてくれる彼との夜はいつも
一脚のグラスにゆっくりと注ぐ
白葡萄な気のします
澄んだ琥珀色を仲良くながめる
若い二人は芳醇な甘味とはいかない
口に広がる香りを楽しむだけ
隣で寝入る彼は青い海星
あたしにとっては
たった一つ見つけた うみのほし
今夜の彼が抱きしめたのはウニだったのか
それとも貝 どちらにしても
二人とも泳いで行けない似た者同士
泳げない女心は銀の鱗のお魚に
目移りすることもあるのです
だからクルリと彼に背を向けてまた
眠りの淵におちていく