見知らぬ地
岡部淳太郎
――いまだ見ぬ地をふるさとと名づけられ怒りのごときとまどいはあり
(佐藤よしみ歌集『風のうた』より)
これからここで
生きてゆくのだと
なんとなく思わされた幼い頃
そもそも自分がどこから来たのか
どこに向かっているのかもわからないまま
気づけばここに
見知らぬ地にあった
知らない地をふるさとと
知らない血を一族と
見做して生きる納得のなか
僕たちの魂はあるのに
この星では誰も
そのことへの説明をしてくれる気配はない
ただ風が吹き
そのそよぎに体がふるえ
そのなかにある心でさえもいっしゅんふるえて
それから ここが
変らずにここであるということを
思い知るのだ
ここがふるさとなのだろうか
いまだ そうとまどいながら
風がやってくる天の先を見つめても
そこには何もないのだが
(二〇二〇年十二月)