住宅展示場にて
猫道
一条工務店
積水ハウス
ヘーベルハウス
三井ホーム
家 とり どり
南極×ミサワホーム
スウェーデンハウス
只今暖房オフで営業中
お客様満足度 総合1位
農林水産大臣賞 受賞
古河林業 大黒柱ツアー
我が家の「大黒柱」を探しに行くツアーです
37坪を体験いただけます
現実的な40坪4LDKの家
木のぬくもりを感じながらの生活
冷蔵庫の中みたいに寒い2月の夜
住宅展示場を歩く
ドライで整然としたヌケガラの街
暖かなリビングはパッケージの中にだけ存在し
冷え切った壁が ただ 黙ってそこにある
「冷蔵庫の中みた〜い」
ではなく
ここは冷蔵庫の中 なのではないか
誰も迎えに来ないまま賞味期限を迎える
私たちはまるで あの日捨てざるを得なかった
フジッコの切り干し大根のパック
のように冷え切っている
誰も迎えに来ないまま
賞味期限を迎えたことにさえ気がつかずに
黙って立っている
家 家 家 家 家
「家を建てる」という発想自体が ここ首都圏ではもう古い
東京でさえ駅近でなければ30年後は意味を成さないかもしれない
という俺の考えは無視して 母親は八王子に家を買った
しかし その金は調布の家を維持できなくなって売却した金で
夢の名残でまた夢を買ったのだった
毎年正月に6時間だけ帰省する実家はピカピカで真っ白で
築50年のウサギ小屋のような木造アパートでの俺の生活とは
あまりにもかけ離れている
ああ これはどこかで見た光景だ
子どもの頃にさんざん連れられていかれた東八道路沿いの住宅展示場
屋根裏に通じる階段が天井から降りてきたり
床下収納にわくわくしたりと
母親のマイホーム幻想に付き合わされた少年時代
こんな家に住める未来を夢想した
住宅展示場に行くのが好きだった
決まってよく晴れた日曜だった
何か新しいことが始まるような気がした
どこか遠い しかしどこにもない
素敵な生活がやってくるような気がした
「自分の理想の城を建てたい」
そう思って間取りまで全部一から決めて
方位までこだわって建てられた調布の家は
違法建築で手抜き工事で
壁の中を水が流れる音がちょろちょろ聞こえた
いつだってそうだ
母親はいつだってそうなんだ
ご利益ある富士山の湧水を取りに行くと言って
早朝に無理して高速を飛ばして事故る
ご利益とは何か?
なあ、カンパネルラ
「ほんとうのさいわい」とは何か?
マッチ売りの少女が凍え死ぬ前に見た
暖かなリビングか?
それは実在するのか
「自分の理想の城を建てたい」
冷蔵庫の中で私たちは思う
「ほんとうのさいわいがほしい」
ヌケガラの街で私たちは思う
それにはまず 冷蔵庫から出なくてはね
冷蔵庫のドアは内側からは開かない
というのは昔の話らしい
勢いをつけて 思い切り 扉を 押せ
賞味期限のない世界へ
ほんとうのさいわいを探しに
一歩 足を 踏み出せ