リリー

 入場券だけ一枚買って
 立ち入ってみたプラットホーム

 あなたが好きな場所だと
 教えてくれた
 京都駅の新幹線のプラットホーム

 鉄道駅でもここにいる
 人たちの雰囲気や
 ここに見える風景の好きだと
 あなたは言った

 なにか濁りのない そこに
 ニュアンスだけが伝わってきて
 だから入場券だけ買って
 それの何度だったか忘れてしまった

 なぜここに
 来てしまうのかも
 よく分からずに
 居もしない
 あなたを探してみた日もあった

 いつもベンチには座ってみることもせず
 一本だけ 博多行きを見送ると
 エスカレーターを下りて行く

 笑みを溢し合う外国人たちや
 俯いていた顔を上げるビジネスマン風もいて
 あの日の二人も博多行きを見送った
 そして
 三度目のデートは無かった

 目的を持たないで動く私のような女もいる、駅


 
 


自由詩Copyright リリー 2023-01-20 19:48:57縦
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