書かなかった手紙の受け取りかた、届けかた
秋葉竹
早朝の
すこし肌寒い街で
みあげると、
風が、
空高くに吹くから
書かなかった手紙が
やさしい透明色の紙で
空高く、
揺蕩っているように
感じるんだ、
そこから地表へと、
送られてくる風には
だからかすかな柑橘系の
香りがしているのかもしれない、
そんなものほんとうは、
ただの幻臭なのかも
しれないけど、
私はあなたのことを
想っているときは
きっと
甘くて酸っぱい香りを吸っているから
この
すこし残酷でうすら汚れた街でも
ちょっと、うんざりしながらでも
前とか
あしたとか
光とか
希望とか
そんなものを
目指して
歩いてゆけているのかも
しれないんだ
早朝の
とても長い影は
まだひとけの少ない
この街一番の大通りに
伸びているから
私は笑って
両手を上げて
長い影の一番先のほうの
てのひらを
ひらひらさせてみるよ
そこにも
書かなかった手紙が
やさしい透明な佇まいで
ひらひら舞ってるような
そんな
気がして、さ