知らないお祭り
soft_machine
赤いゆびに絡まれ
知らないお祭りに行った
ひとつとして確かなものがない
不思議な空間
境内は水いろで甘い
不揃いなお提灯の踏みならす
威勢のよいはっきょい
仔犬の氏子さんに
勧められたお神酒が
ちょっと埃っぽくて
どんな神さまだって
ここでは笑顔でいたくなるだろう風情
轟いたり揺れたり
人がひとつとなる時間
消えてゆく闇のなんて大きな唇
ゆらゆら
どうどう
海の上で打ち上げ花火が開く
竜巻の吸口がゆっくりと延び
どこかへ飛んでゆく
鏡は幾らでも続く
縄張りの境に切られたゆびは
ひとしきり転がって
窪みに立つ
次の送り主を探しだす
いち年の終わりは
宇宙の終わり
わたしを連れさる
いちまいの鏡が
音もなく割れる