イリアスの矜持(六)
朧月夜
「何度でも言います。わたしは世界の行く末の鍵にはなりません」
「ははは。そう思っているのは、あなただけですよ。
現に、アイソニアの騎士は、この場所へと向かっている」
「グーリガン様……」
「アースランテが滅べば、このライランテ大陸では、
ラゴス、クールラント、ファシブルの三国が台頭する。
そして、そのうちの一国が大陸を支配するのです」
クーラスは言ったが、そこには計算の狂いが含まれていた。
ライランテの東部の小国たちの動向、そして、レ・スペラスの動向を、
考えのうちに入れていなかったのである。歴史とは、
常に大国の動向のみによって左右されるものではない。
祭祀クーラスは、クールラントの筆頭祭祀という要職にあって、
大切なことを忘れ去っていた。すなわち、国とは人の集まりだということである。
個人とは、時に権力者の立場を滅ぼすものなのである。
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クールラントの詩