エインスベルの逡巡(八)
朧月夜
「まずは根拠を示してほしい。何故、わたしが世界を滅ぼすのか?」
「それは、貴女自身が分かっておいでです。貴女は復讐を是としている。
それは、やがては世界そのものへと向かうものです。
古の賢者は言いました。『復讐は己と世界、二つを滅ぼす』と」
「ふっ」と、エインスベルは息を吐いた。
格言や預言など、世界の真実を表しているものではない。
それは、世界に対する助言でしかない、と思っていたからである。
「それは、薄弱極まりない根拠だな。ことにわたしにとっては」
そう言うエインスベルに対して、クシュリーは顔を青ざめさせた。
「あなたは、言霊ということを信じないのですか?」
「言霊? 何だそれは?」
エインスベルは、怪訝な面持ちで、首を傾けた。それに対して、
「言葉が世界に対して具現化する、という考えです」と、クシュリー。
「良き言葉は良き事柄を、悪しき言葉は悪しき事柄を、世界にもたらすのです」
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クールラントの詩