夢に出てこないで
秋田の米はうまい
母が亡くなってから4ヶ月
病気が分かってからの8ヶ月は母の死の不安と
重たい影のさす実家帰りと
フォロワーを減らさないためのSNSとの両立
昔叔父が急逝したときに
夫を亡くした叔母が
「あの人が近くにいる」と言ったことを
私は馬鹿にしていた
親しい人を亡くしたのに慣れるのは三年かかると聞いた
この前実家に帰って
母のいないソファを見た
自分の分と
誕生日が近かった母の分の
ケーキを買って父と姉と3人で
食べた
地下鉄の階段をおりているとき
料理が美味しく作れたときに
不意に母に報告したくなる
あの世に行った故人を引き止めないように
母に関心のないふりをした
あの世にいっても母は
至って親切で
足が不自由な母と旅行に行きたかったと
思えばすぐに
夢で一緒に旅行に行ってくれる
もう一度抱きつきたいと思えば
その日の晩には夢で
母に抱きつける
言葉は
混ざりあった形がないものを
まじないで縛り付ける力がある
だからこうして書いている
泣きながら
食べるのを絶って
父に迷惑をかけずに
死にたいんだと家族全員に
説明した母
私は絶対に後悔の無いように
良い人生を送って
母の死を
自分の腐り止めに
する
そうすればきっと
死んだ母の
新しい人生が
始まる