溶け出す音楽
nia

あの覚めた感覚は味わいたく無い、心が高振らず醜い自画像でも見ているような気分を数時間過ごすのは全く詰まらない それより昼過ぎた後、空気が沈み出し未完成の音楽流れる まだ正気に戻っていない頭に少し風が入り何かを表現できるような気がしてくる Sのギターの裏側に流れているであろうメロディーを想像する 日の光は薄く遮断されている 音は幾分反発を避け、溶け出して交わるのかもしれない 
きっと音は静まり、返り開け放たれた窓の外では木を打ち付ける音が鳴っている 微かに虫が鳴いているのが聞こえてくる 風が吹き繁る葉が時折擦れ音を立てている 私はこういう時に音楽が生まれるのだと錯覚する

全てを忘れることだ 窓を開けることだ これは私のものだ

日が出て落ちるまで窓を開けて外を眺めている 程なく決まった時間に同じ人々が通りを歩いていく 子供が手を振っている 女は明瞭な目的があるように進んでいる 男達は何かを見ているようだが判然としない、首を肩の前に垂らし歩いて行く

言葉よりも微かな息遣いが室内を満たし、高地に来たように空気が薄くなるように思われる 小さな部屋に次々と人々が訪ねては去っていく


自由詩 溶け出す音楽 Copyright nia 2022-12-11 15:56:15
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