盗賊ヨランとアイソニアの騎士(五)
朧月夜
アースランテの千人隊長であるアイソニアの騎士は、
彼のものとなる情報網を持っていた。
二人は、場末の貧民窟へとやって来て、聞き込みを始める。
「イリアス・ナディを知っているか?」マティアスという男に尋ねる。
「旦那。この国は今や、他国の内政干渉によって、ぼろぼろの状態です。
人探しは、たやすくはないでしょう」
「しかし、それでも頼みたいのだ。イリアスに関する情報を集めてくれ」
「仕方ないですね、旦那の頼みじゃあ。仲間に聞いてみることにしましょう」
「頼む。彼女は、俺にとっては最愛の娘なのだ。いずれ結婚することになっている」
「結婚をね……千人隊長が恋にうつつを抜かすのは、歓迎出来ません」
「俺の正義と、生きる意志とが関わっているのだ」アイソニアの騎士は唇を噛んだ。
「良いでしょう。あなたはこの国にとっては、必要な戦士です。
なるべく、あなたが通常通りに戻れるように、最善を尽くす心づもりです」
マティアスは、表情を変えず、面も上げず、低い言葉で呟いた。
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クールラントの詩