希望の朝。
　常緑樹が瞳に優しい。
　無情の朝。
　屹立する断崖絶壁に立っている。
　どんな夜を過ごそうが朝は来る。
　
　不安、悲しみ、淋しさ、諍い。
　微笑み、喜び、美、愛。
　連なる言葉に意味を探して、生きる。
　全てを経験したからと言って嘆くこともない。
　全ての人に朝は来るのだから。

　生きる事に疲れたらまたおいで、と言ってくれたジャズ喫茶の店主はもういない。
　出会い、別れ。
　貴方を守る人はいる、なんて軽々しく言えない。
　ただ、過ぎゆく時間の中で精一杯生きる事は出来る。
　気持ちと時間が共鳴する瞬間はきっとある。
　
　ほんの少し孤独を感じたら、珈琲を一杯。
　私はそこに煙草を添える。
　そうして夜が明けるのをのんびり待っている。
　無情の朝など怖くない。
　希望の朝だけを信じていたい。