ティアラともいう
えのき


スーパーで買い物をしている間に、外はすっかり暗くなって心細くなった。
自転車に積んだ荷物が重くて、よろけないように注意しながら、狭い四つ辻を車と車の間をすり抜けながら曲がった。
ふいに木に咲く白い花の束が目に飛び込んだ。
白い花の束は花の重みで垂れ下がり、その下を通る時私の頭に冠のようにのっかった。
それはまるで、大きな空の手で戴冠させられたようだった。
「えー? 私の何がそんなに?」
何がって、それは私には思いつかない。大きな空の手しか知らない。
小さな、一瞬の、木に咲く花の、冠。



自由詩 ティアラともいう Copyright えのき 2003-11-27 02:55:34
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