夢の潮騒
岡部淳太郎
夜に浅い眠りを過ごしていると
その夢のなかにどこかとおくの
海の波の ざわめきが入りこんでくる
未来への何かの予兆か
遂げられなかった過去の思いへの悔恨か
そのざわめきはこの脳を支配して
永劫つづくかに思えてくる
そのため 眠りは浅いままで固定されてしまい
疲労は回復しないまま朝を迎えることになる
その海がどこにあるのか
私は知らない
それとも それはどこにもない
ただの幻の海であろうか
私は私自身の心の臨界点までじっと待つ
そして いつも通りの浅い眠りのなかで
高まった波にさらわれ
海の底に沈んでゆく自らを
黙示のように予見するのだ
(二〇二二年十一月)