猫じゃらし揺れている
ひだかたけし
無数、無数
猫じゃらし揺れている
街道脇の歩道の傍ら、
太陽は傾むき沈みかけ
*
過ぎた一日の夕暮れ時、
子猫と息子と遊ぶのに
一本、二本、三本と
猫じゃらし摘んだ
深い森の入り口の
とある草むらの一ヵ所
斜光が茜に照らす
光のスポット
仄かに確かに広がって
過ぎた一日の夕暮れ時、
思わず動きを止め
立ち尽くし
ふとわき起こった
喪失されたふるさとの
あまりの懐かしさに涙した
*
無数、無数の
猫じゃらし揺れる
街道脇の歩道の傍ら
太陽は傾き斜光のスポット
茜に染まり仄かに広がり
わたしの過ぎた一日一時
螺旋に渦巻き浮き上がる
*
無数、無数の
猫じゃらし揺れる
今日、この一時この瞬間に、
未知に歩む内なるフルサトを
未知に近づく内鳴るフルサトを
静かに確かに予感して
静かに確かに想起して
無数、無数の
猫じゃらし揺れる
今日、この一時この瞬間に