2004年の(cap verses / そよ日暮らし投稿作品)
板谷みきょう
しりとり四行詩
11/02
10月最後の日曜日
炭酸水と お似合い
苦手な初雪の 感傷が
喉の辺りに はりついて
お似合いの言葉 いつも
シャーペンで きっちり
苦手な初雪の朝だったり
10月は 誕生
苦手だから もうヤダ
十月は 初雪がお似合い
煙立つ 指先の煙草
マシュマロを 焼こうか
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
10/26
靴のかかと
三回鳴らし
レモンドロップ
ありがとう
レコードを
ありがとう
靴紐結んで
思い出話
ありがとう
かかと踏んでる
運動靴
列に並ぶ 玄関口
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
10/19
届かない 心 痛むベンチ
病院に 落ち葉の 波は
きらきらと 曲を奏で
木々 寂しく 美しく
波打つ胸に 風 巡り行く
届かない声が 季節に流れ
届くと信じた きらきら
過ちも切なく 離れた病院
きらきらの光 届かない
病院の 揺れる人の 波
「お父さん。私です。」
葉が散って 秋の訪れ
届かない
ただそれだけが
辛くて
何も できない
波線の緑は
息の数 鼓動の数
モニターの
音は 小さく
きらきら 溢れる
大切だったはずの
記憶も 失くして
開拓の苦労と 共に
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
10/12
布を 纏うみたい
光りで染めた 木葉
重ね着た軒の蓑虫 耳にする
ただいまと おかえりと
光射すのが 眩しくて
厚地の布のカーテンを
嬉しく作る 君は蓑虫
耳に沈む 鼻歌は 調子っ外れ
耳に光る プラチナピアス
裏腹に ほつれ髪の蓑虫は
小春日和に 布団干し
洗濯したての 雲を 並べて
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
10/05
じゃんけんのあと
トンネルくぐって
じゃんぐるじむ
君の笑い声 耳に
トンネル じゃないから
出口 ないのかなぁ
かすかに 小さな約束
残す 君の面影
君の くったくのない笑顔
戻って来ること 願いつつ
トンネルに ぽつんと残る
一人じゃ いやだから
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
09/28
だめだよなぁ きっと
もう しょうがないけど
忘れちゃった よね でも
しっかり 待つよ どんぐり
茶色くなって 帽子をきっちり
おすましは だめだよ そう
しっかり天使のようなあなたの
手の掌にチョコと どんぐり
しっかり こげ茶に 染まってた
こう寒くては だめだよ やっぱり
つるべ落しの闇に まぎれて
消えゆる 庭の どんぐり
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
09/21
夕焼けに託した 白い霞のような恋とか すばらしい失恋の焦がれ
すばらしい 景色に燃ゆる夕焼けの 恋とかを彩って
恋とか平和を願うんだ 夕焼けの子らのすばらしい 無邪気に
天使があやしたように ほほえむ 頬の赤い子らの笑顔に
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
09/14
しらないものと
はしらないもの
しってることに
はしってることも
かなわないと
いわないのは
はかないから
わからないから
だから
だめもとで
でなおせたらと
おもってみたり
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
09/07
ドラえもん 暑いわ
四次元ポケット
夏の香る 雨上がり
空につながれば
おなか が
空くの だよ
なんにもしない
毎日なのに
あの夏を 地に
舞い降りる 音
しゃりしゃり かき氷
砕いて頭 キーン
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
07/20
ポケットの
望郷
麦藁蜻蛉に
放つ
食べる手に
錆びて
絡まる
重み
みたいだ
何て いい加減
恥じたままの
思惑が
ポケットに 言を食む 恋
廃屋みたい公園の 滑り台
香り 淡く 儚い丁香花
透明な 木漏れび
食紅の赤みたい 褌ひとつ
念仏じょんがら
さだめを裂くギリヤーク尼ヶ崎に
ポケットの小銭 ばらばらと
見たいのに 言葉の響く
ポケットの 雨
心 埋め逝き 独り
食う 想い黙々
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
07/13
砂浜で
一筋の光さえ届かぬ
海の底の魚を
想う瞳で 空を見て
おはようの 声
待ちわびて まだ
眼を閉じて
目覚めているけど
この手に残る
懐かしい
割烹着の白
母のポケット
砂浜に 響く おはよう
生憎の 霧雨キャンプ
闇夜を越えて
この手に眠い 朝食
おはようと 到着した
深夜の砂浜 この手に渡され
湿り気 帯びた 挨拶
線香花火 呟く みたい
この手に 繰り寄せて
おはようが 凍え交さる
砂浜キャンプ ぬくもりに
指先まで ざわめく詞
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
07/06
わたしからきし意気地なし
今更 口に できないぴょん
残りし想い 形はぐれ
お神楽の狐面 箱に入れ
形 残さず 朝 ぴちょん
ぴちょん ぴょん
雨音で わたしから
目覚めた 心 中の梟
ぴょんと 弾んだ形で
立掛けた 影 花の虜
(わたしから だらだら かしたわ)
回文 ひねるジャガイモ畑
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
06/29
約束してた 嘘
見抜く のも また
難しい 繋ぐ言葉の
消さないで揺れる 陽炎
偶然の一致 な の
消さないで在る
百の 光 千の 風
約束は生命 に
消さないで 記憶 結ぶ
忘れないで 約束 刻む
四十億年前から続く拍動
やってごらん ライブだよ
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
06/22
お願いします
他の 誰かのことなんか
もう どうだって いいよ
眠る夜に 眠らない夏 祭り
夜 短いメールで つながるか
届かない「お願いしますネ」
軋む こころ 遠く
偶然 逢えたら甘い 誘惑
流転流浪 唄の旅道
ルージュの色に戸惑う夜
とても 穏やかな口調だ
「オネガイシマス」沈黙が歌う
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
06/15
遺言の夕焼け ぎりぎり
こころ貧しい とがった夜
蒼茫の海 感動の満月
灯台の 光 一筋
感じてる 白い夏の雪
生まれたてのアカシアだよ
ぎりぎり 遠く
遺言の綿毛 舞う
ぎりぎりに 酷使した肉体
感極まって 流す 涙の美しさ
溢れ出す 遺言の汗に応えて
目指すのは アテネ
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
06/01
ふたりきりの ふくらはぎ
すべてが そこはかと
なく 見えない しとしと 囁く
暖めて あげたくて
素直なままなら まだ もう
捨てられた はず なの
少しも 楽になれなくて
好きだった 果ては ただ きす
見えないけれど もたれかかる
ひきはがされて しがみつき
柔らかく 絡みつく 記憶
そぼ降る雨 今 さえも
ふたりきりでも
思い出をたどれば まだ難しい
言葉の真実 二人の秘密
わりきれぬ 想いの 入道雲
澄んだ心に ぽとぽと 触れる
物思う屋根の 雨音
見えない けれど そっと
二人きりの 耳たぶ
見えないものは 見なくていいよ
おぼろげで 澄んだ やわらかい
光の中 二人きり 雨 きらきら
降り注いで いました
ふたりきりだと
「愛してる」って
言ってみても
笑うだけなんだから
スリップしちゃうのは
仕方が無いよ 涙雨で
距離感 見えない じとじと
二人きりの 心 だから
見えない ここからじゃ
地下鉄の壁に 安っぽい
悪戯の 花摘む 此処に
在る 雨 すべてが
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
05/25
睦まじく 昔の約束 語り
時の流れ 背中に 積もる
憧れが 消ゆるまで
囁きの居間 光り溢る
居間に 哀しい
ちゃぶ台の 背中合わせ
思い出と 仲睦まじく
くすんだ物置 それっきり
背中に背負う 大きな夕陽
夢いっぱいと 睦まじく
陽の傾く 居間の
掴み損ねた 色はアブラナ
睦まじく 家族
暮らす 喜び果て無し
幸せの蝉 森は
計り知れない ⇒
居間に 居て
手の離れた
孤独な 蝉 求めに
二階へ 向かう 背中 ⇒
背中 割る 蝉の幼虫
上手く 間に合え よ
夜明け前が 勝負
無事を願いつ 睦まじく ⇒
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
05/18
待っててくれる
遠い記憶の日々草
わがままな 咥え煙草
日が暮れる さようなら
日が暮れる 黄昏時は雨
おだやかに わがままな言葉
つなぐ糸のかよわさを 交わす
待っててくれる 睦まじく
わがままな言の葉だけで
待っててくれる約束を きららと光る
海に流して 日が暮れる
寄せては返す想いは 波に
待ってて 暮れる闇夜に
紛れたはず 空 白々と帰宅
玄関先の外灯 いつまでも
灯ったまま 湯につかり
日が暮れる さくら舞う空
おろそかに していた愛
こじんまりと 湯上りに
のんびり寝ころむ 居間
わがままの心は 逃げ水
うつせみだったか
陽炎だったか
くるぶしの垢 こする
「待っててくれる何時までも。」
桃の香りの優しき 響き
昨日の呟き そぼ降る雨は
はにかみくすむ 町 洗ひ ⇒
日が暮れる 月影のもと
戸惑いを 抱きつ
続く並木は ニセアカシアの真綿
漂う如き風 沁みるわがまま ⇒
わがままを 幾度か繰り返し
暫し 踏みしめ 本を読む
無念にまどろむ 蒼の闇 照らし
静かな せせらぎ しばしの間 ⇒
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
05/11
はらり 手渡された誘い水
月星の明り 届かぬ
繁華街の誘蛾灯
来なきゃ良かったネオンの薄野
ちょっとさみしい帰り 道
大人なのに ぷらぷら 独り
ネオン街のマンション 見上げ
「子供居るのか…。」 鯉のぼり
ベンチを探して
薄野から抜けた
大通り
夜更けのことだよ
はらりほろりと
月の光 いつも変わらず
闇夜の鯉 照らされて
しんと更けたる
ちょっとさみしい
雨 濡れそぼり
空 泳げぬ
鯉 のぼり
ベンチに座った
ボクのため 降りてきた
きつね 雨に 化かされ
声 たてずに 泣こう
はらりはらりと
母の流したちょっと寂しい
涙の訳を 離れた
ベンチで はらはら想う
ちょっと淋しいベンチの上に
さくらの花びら はらり落ち
遥か遠くの誰も居ない
山 裾野 木蓮の閑か
ベンチ座りは あの娘が目当て
会うと切ない はらりと揺れて
乱れる心は 五月の嵐
ちょっと寂しい 珈琲ブルーズ
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
04/27
写真の中で
はにかみながら
春風に 舞う
すきだったひと
春風の喇叭 水仙みたい
すきだったひとの 微笑
忘れていたアルバムから
写真 一枚 はらり落つ
すきだったひと なお
まぶたのそこに 映る写真
逢えると信じて 春風に
あざやかな色 思い出すため
写真に笑顔は
つきものだけど
これから撮るのは
レントゲンだよ
春風に 揺れた前髪
さらり 何度も
振返り 薄寒い公園
陽だまり ベンチ
すきだったひとの癖
雨降り 路地裏ランデブー
珈琲屋 2F 窓硝子
待ちわびて付けた 額
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
04/20
アナタを探す
いつ
死ぬか
わからないから
おちた 稲藁
畑で焚いた
煙
懐かし
みつけられない
心の郷
みせかけ なりすまし
温もりに出会う 喜び
アナタから 教わった
泣きながら 生きるのは
笑いながら 死ねるためだよ
曖昧に流れるまま 迷子になろう
おちた痛みを
背負う唄にも
こんなに強く
癒される 旅
みつけられない 桜の蕾
景色も色も 冴ゆる春
南へ向かう風を切り裂き
白く浮かぶ 初めての人
アナタとも 縁(えにし)の糸
赤にしたくて
後染めしようっと
行き 帰り 満天の星
おちたシアワセ
探してる人 待つでなし
待たぬでもない 巡り合わせに
すれちがう 春風
みつけられない 届かない
やわらかな メロディ
もどかしさ 伝えきれず
逃げ出しながら あたふたと
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
04/13
すきなものに
うつつを抜かして
翼は 閉じたまま
透き通る ピエロの影
翼は夜を 翔ける浪漫
好きなものひとつ得られず
悲しんでるピエロに
月の明かりが見えますか
ピエロになれない道化師は
ことばのしずくを音に替え
萎えた手足と翼も折れた
あなたの背中がすきなもの
すきなもの 君と
探して 歩む
春は 日向の 緑
土手に咲く ふきのとう
翼は臆病な背の 小さな希望
ひとり 夕暮れに ひらく
透き通った 羽根 薄く
揺れて 震える 光
ピエロのドーラン 剥げかけて
あやつる糸の 絡まれば
動きは 取れず
あやかし 喘ぐ 霧の道
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
03/23
国境は ない
けれど 天気の良い
影踏みの世界
ひとつ 夢 見ゆる
まわる煙の 渦巻き
ころがしながら 深く
吸い込み 肺をえぐり
日常に 鋭く よどむ
新学期に 微笑む
会える喜び 繰り返し
駆ける こどもの
温和な 春の 翼は
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
03/16
男だって 哀しいときは
哀しいのです
ないしょ
ないしょのこと だけど
どこかに手を伸ばし
救ひの光 待ちわびる
美しい 思い出
旋律のような
カーテンを抜ける すそ
たよりなく 揺らめくたび
穏やかな 気持ちの中
春風 零る
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
03/09
あなたの やさしい曖昧
接吻 ひとつの毒
妻となり 母となりゆく
あえぐ魚の 夢見ゆる
毒にも 薬にもならず
おずおずと淡く こぶし咲く
あなたの姿に ほころぶ
それは きっと 遠き遙か
姿見に掛けたる布は
乙女心の 凛 として
あなたの姿 あたふたと毒は
流され つつの 日常
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
03/02
花びらの
桃色に
雪の白さ 忘るる
それも 風流
ワクチンは
パソコンの
ウイルス退治
貧しき国の こども 想う
たたずむ のか
ただ すむ のか
それだけの
大きな ちがい
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
02/17
歌は産声 春 始まり
軒先のつらら 空 遥か
しずく滴り 落つるる
冷たささえも 嬉しくて
感傷の追憶は 未練か 一途か
ぽこぽこと ぷちぷちと
ずっと探して 月明かりの海
魚のまぶた 撫でる ぬるい光
かなり 降ってますか
それとも 降りそうですか
今 降ってますか
ゆっくり 嘘を そっとつなげて
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
02/10
廊下 走って「やり直し!」
耳たぶまで赤い彼女 忘れない
「え?あ、いや…」
風邪の熱に 魘されてたのさ
レシピ片手に 料理する彼女の
愛のスパイスは 作ろうとする想い
アツアツのリゾットを運ぶ
鍋つかみの 手袋 黄色
彼女はいるぜ 本当さ
いつも独りだった 彼と
うんざりしてた思春期に
日向臭い 木造校舎の廊下の端
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
02/03
暗号の恋文は 解読できない
かつて まだ パスワードを
知らないがため 秘密っぽいまま
透き通った 想い の 樹海
帰りたい 帰れるものなら
なすべきことは 山となろうと
そうして後悔を繰り返し 繰り返し
想い出に変わる降り積もる雪の窓辺で
黒を見る 凍てつく影が
塗り重ねて浮き立つ雪の
仄かに 白く 月明かり
降り積もる 浮かぶ やさしさ
★*゚*☆*゚*★*゚*☆
01/27
まるめた毛布にくるまり
遠い街にいる あなたを
じわじわと想う一日の
終わり 血が 滲む
よるべない想いと想いは
どこか切なく 懐かしく
やわらかで あたたかい
途方に なぞらえた猫の 行方
ラーメン屋で しみじみと
何とか乗り越えた 一年
恋はするものじゃなく落ちるもの
大雪 降りしきる 遥か
まるで発掘される遺跡のように
何気ないささやかな日常こそが
インスタントラーメンの醍醐味
どこまでも心許ない夜に思ふ‥
夜 雪が哀しみに怯えながら
降り積もり 凍えたときは
まとわりつかないよう
ただ 安らぐ 幸福
ラーメン 今も昔も変わらない
まるちゃんの 味噌あじ
喜びも悲しみも 一人
共働きで 留守番の夕餉