飴
這 いずる
止まない雨はないように、そう言って傾ける傘の方向に、居ない私を見ないままだ。傘の下にある君の濡れた半身と、傘の下にある君の半身と、外にあり見つめている、羨ましいような妬ましいような、いや、そんなものじゃなくて、関係性そのものじゃなくて、もっと、単純に、もっと私を見ろ、誰でもいい誰かにする親切じゃなくて、通りがかりの人への視線よりも親密に、恋人に笑いかけるより熱情をもって笑いかけて、遊んで、三人でもいい、何人でもいい、どこへ行ってもいい、だから。切実とあざ笑うな。そういうふうな乾いた心臓を持ってて羨ましいと哂ってほしいのか?私の必死の願いが打ち捨てられるように、お前らの心臓の鼓動がわからない。隔たりだ。私たちは隔たりであり、わかりあえない。わかり合いたいと願って捨てられた、唯一のことは、分かっていたと思っていた。
傘が鳴っていて、雨だれがはじける。
転がった傘の内側を眺めて、水が溜まっていく