クーゲンドルにて(六)
おぼろん

千のドラゴンは、まさにアイソニアの騎士たちに襲いかかろうとしていた。
この時、剣を捨てることとは、まさに己の死を意味する。
(こんなところで死んでたまるか)という思いが、
アイソニアの騎士にもエイミノアにもあった。だが……

一人落ち着いている者がいた。盗賊ヨランである。ヨランは、
「いけません」と再度言った。「ドラゴンたちと話し合いましょう……」
そんなヨランを、アイソニアの騎士は顧みる。
「世迷言を! お前の口先から出る言葉が、ドラゴンを倒せるものか!」

「ドラゴンを倒すのでは、ありません。ドラゴンたちと話し合うのです。
 そのためにこそ、オーマル様が遣わされたのだと、お思いになりませんか?」
「分からぬ道理だ」そう言って、アイソニアの騎士はさらに一頭のドラゴンを倒した。

”オーマル”であったドラゴンは、苦痛に顔を歪める。ヨランは、(本当に申し訳ないことだ)
と思った。(わたしが、アイソニアの騎士ともっとよく話をしていれば……)
「騎士様。騎士様。ここは、剣をお納めください。ドラゴンたちは襲っては来ません!」


自由詩 クーゲンドルにて(六) Copyright おぼろん 2022-10-16 16:22:20
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クールラントの詩