クーゲンドルにて(五)
朧月夜
アイソニアの騎士は、一頭のドラゴンを斬って捨てた。
「ぎゃっ!」という悲鳴を、オーマルであったドラゴンが上げる。
しかし、「アイソニアの騎士様。騎士様。ここは対話すべきです。
ここハーレスケイドでは、ドラゴンは恐るべき存在ではないのです」と、ヨラン。
「ドラゴンとは、すなわち我ら人間の宿敵だ。
ここで龍どもを切り捨てて良くない理由があるだろうか?」アイソニアの騎士が言う。
「それがあるのです。どうか、お聞きくださいませ。
ドラゴンは、『世界』からの使いです。つまり、ヨースマルテからの──」
「たわごとを言う。龍どもは、我らの生存を阻む存在ではないか!」
「違います。ドラゴンたちは、自然なのです。その心理にあっては、
我ら人間こそが、自然を乱す存在。調和がなければいけません」
「調和? それは何だ」──「対話です。アイソニアの騎士様」
「ここで、ドラゴンと話し合えと言うのか? 奴ら獣物相手には、言葉など通じるまいに」
「ですから、心と心で話すのです。きっと、その意思は伝わります」
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クールラントの詩