秋星より
本田憲嵩
交わされる会話と会話との狭間に
干からびた蜻蛉の羽を
玻璃のように砕く
緩慢で冷たい秋の風に舞いあがって
日めくりの暦はもはや作業的に剥がされてゆく
はいいろのため息を漏らすために
つくられたいつもの小部屋で
伝えるため紙に書きつづった最大限の未完成の言葉が
くしゃくしゃになって
くずかごから溢れだしている
そんなふうに
古い窓際で陽にさらされ頭髪の色素は抜け落ちてゆくようだ
夏のリップグロスのゼリーの味が思い出せない
今はただ落ち葉を見つめている
秋の地球の
そんな老いの星の重力だ