世界の真実(十五)
朧月夜

「そうでございます、騎士様。先ほどの魔物は、エビ・グレイムと言います」
ヨランは、アイソニアの騎士から言葉を引き継いで言った。
そして、説明をする。「この本、オスファハンの手書きのメモによれば、
 エビ・グレイムとは、心を狂わせる魔物でございます」

「心を狂わせるだと? この女が男に変わったことも、それに関係しているのか?」
「それは分かりません。ですが……、この旅に変化が訪れたことは確かでございます」
「変化? それは何だ?」アイソニアの騎士が、(愚にもつかぬ)と言った調子で尋ねる。
彼にとっては、旅とは冒険であり、冒険とはすなわち生死がかかった旅だったのである。

「先ほどのエランドルの言葉から察しますに、わたしたちは、
 世界を変える力を手にしようとしているのだと、分かりました。わたしは、
 エインスベル様だけが、世界を変えられると信じていたのです……」

アイソニアの騎士が唸る。「誰にでも世界を変えられるということか?
 たとえ、悪党にでも……」そう言いながら、彼はエイミノアを見据えた。しかし、
実際に脳裏に浮かべていたのは、祭祀クーラスである。クールラント一の非情な男。


自由詩 世界の真実(十五) Copyright 朧月夜 2022-09-29 18:02:35
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩