灰汁
あらい

空には星がある、ぼろい暗幕のことだ。
引き裂けぬだけで虫がついて、
大層蝕まれ穴だらけではないだろうか。

それら包まれて流されてきたばかりだった

今日は今日とて曇り空の舌で何を舐め取ろう、
指を濡らして黴だらけの本を掬っては捲る。
泥のような床に乱雑に転がる、誰かの生き様が
嘘も方便もなくあてつけのように連ねてある、
生き恥が個々に氾がっていた星回りの空を綴じる

わたしのその瞳は濁濁と
また細く
モノクル片眼鏡の下で深々と雪を追っていた。
探しても掴みようもない儚いものだ。
脳裏を掠めるだけはらりと裸体を曝し
疼くような傷みを鋒だけを保って、その日は確かに
ピシャリとするほどの冷たさで
はくいきは綿毛のようにすっと消えるものでした、
心なしかしゃんとするような玻璃の中では、オンナは
灰に封じ込めたナリかたちでした

薄い茶が凍りかけていました
踏みつけられたラクガキの、護美箱から溢れた
夢や希望を浸水させ
書き連ねた、いっぱしの名は呼ばれることはなく、
着せられることもなく無垢なまま、

ただ皎く宙を穿っておりましたので。


自由詩 灰汁 Copyright あらい 2022-09-28 21:32:30
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