灰汁
あらい
空には星がある、ぼろい暗幕のことだ。
引き裂けぬだけで虫がついて、
大層蝕まれ穴だらけではないだろうか。
それら包まれて流されてきたばかりだった
今日は今日とて曇り空の舌で何を舐め取ろう、
指を濡らして黴だらけの本を掬っては捲る。
泥のような床に乱雑に転がる、誰かの生き様が
嘘も方便もなくあてつけのように連ねてある、
生き恥が個々に氾がっていた星回りの空を綴じる
わたしのその瞳は濁濁と
また細く
モノクルの下で深々と雪を追っていた。
探しても掴みようもない儚いものだ。
脳裏を掠めるだけはらりと裸体を曝し
疼くような傷みを鋒だけを保って、その日は確かに
ピシャリとするほどの冷たさで
はくいきは綿毛のようにすっと消えるものでした、
心なしかしゃんとするような玻璃の中では、オンナは
灰に封じ込めたナリでした
薄い茶が凍りかけていました
踏みつけられたラクガキの、護美箱から溢れた
夢や希望を浸水させ
書き連ねた、いっぱしの名は呼ばれることはなく、
着せられることもなく無垢なまま、
ただ皎く宙を穿っておりましたので。