リュート
妻咲邦香


干し草を積み上げて小刻みに揺れながら
走る軽トラみたい、知り得ない生き方
不意に近付きすれ違う
同じ約束を抱えて巡り会えた
私にはまだ解けない数式
軽々と正解、撒き散らして去る
砂埃と共に

それでもね、はしゃがないって決めていた
覚めたくない夢に続きは用意しない
やっと見つけたものが怖くて震えてるから
まだ触れないで離れて見てる
泣いた日のこととか、後で話して聞かせてあげる
明日ね、まだ君がそこにいたらね

いつかなくなるものしかないから、残すことに躍起になるんだ
さよならまでの距離を測って
出来るだけ伸ばして引っ張って飾って
最後はぐちゃぐちゃになるように、なるべくね

どうしてみんな、あの丘を越えて
そうしてみんな、悲しみだけ置いて
この世界ちょっとだけ不公平に出来てる
誰も一番の味方に気付かない

お早うの秘密を隠した、中途半端に長い髪
古楽器みたいになびかせることで
揺さぶりをかける
走り出してる背中が見える


自由詩 リュート Copyright 妻咲邦香 2022-09-24 23:07:34
notebook Home 戻る