彼の在処に
静
雲の棚引く峰の間に
薄く光る紫苑の色彩は
遠くに歴史を追いやって
何かを得ようとした時代を照らして
風が稲穂の波を作って
杪夏の香りを運ぶ
また何かを見失おうとする
忘れてはならないはずの何かを
胸の奥が傷んでいる
彼の声を無視し続けたから
正解をいくら問いかけても
風は指を優しく通り抜けるだけ
辿り着いたこの景色で
奈落の際にいる彼の在処に
きっと繋がれることを信じている
暁を織り成せると祈っている
自由詩
彼の在処に
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静
2022-09-21 23:09:02