九月の夏の熱風
ひだかたけし
僕はもしかしたら
天空に輝く太陽だったかもしれない
僕はもしかしたら
通りを吹き抜ける風だったかもしれない
僕はもしかしたら
男ではなく女だったかもしれない
そう考えたらとても気が楽になった
そう感じたらとても心が開かれた
俺はもしかしたら
都市を破壊し尽くす地震だったかもしれない
俺はもしかしたら
野望のために人々を虐殺する独裁者だったかもしれない
俺はもしかしたら
悪夢に出てきた闇の工員だったかもしれない
そう考えたら酷く恐ろしくなった
そう感じたら吐きそうになった
あらゆる力動が存在が
私というひとりの人間のなかで
蠢き響き躍る
ぼくはもしかしたらあなただった
おれはもしかしたらおまえだった
この果てない宇宙から生まれ
人は孤独だ
この果てない宇宙に属し
人は同じだ
*
今、熱風が吹き付ける
病んだ私の肉体を
沸き立つ私の魂を
九月の夏の熱風が
私というひとつの存在を
優しく激しく包み込む