段差のある生活
室町

段差がもちこまれた。
高さ30センチほどの
段差
だ、
が、
今までこのことに、
なぜ気がつかなかったのか。
段差があってはじめて
これまで真っ平らな生活のなかにいたこ
とに愕然とした。
ただの段差だからべつにどうってことはないけど
これは神の秘蹟だ
人類の神秘だ。
たとえばこの雑文も
段差で出来ている。
段差はまるで音楽のように......
まてまて、先を急ぎすぎだ。
たかが段差じゃないか。秘蹟だの神秘だの
段差のほうから顔を赤らめて逃げていく。
段差は、
もっとデリケートなものだ。
あからさまにいわなくとも段差それ自体は
段差でしかないのだが。
とりあえず一段しかないとはいえ
膝を曲げ、
足裏を上段に置いて、
引力に逆らって上がってみる。
つまらない。これだけではつまらない。
腰を下ろしてみる。
これもそれほどたいしたことじゃない。
下に寝転んで、片足を上に乗せる。
これはちょっと変わった姿勢だが、案外気持ちいい。
段差に両手をかけて腕立て伏せ。
なんだ、筋肉運動だ。
あ、背もたれになるな。
30センチほどじゃ無理か。
跳んで見る。
右足で着地し、身体を左にひねって
半回転し
支えを左足に換えて
また右足で着地する。
けっこう愉しい。
アイデア次第で
どこまでもむつかしくできそうだ。
どこといって取り柄のない
ただの段差があって
その前に
どこといって取り柄のない
ただの人間が立っている。













自由詩 段差のある生活 Copyright 室町 2022-09-11 06:51:41
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