キッチンの茶色いテーブルの下を
オイタル

キッチンの茶色いテーブルの下を
小川が流れます 黒い水
ちょっとおかずをね
落としたから
(母さんの作ってくれた
 お煮物のほぐしたの)
足元に小さな魚が集まって
たいへんです
箸で掬えるかしら
いえ
ほぐしたのほうのやつ

テーブルの下
川は流れが小さいから
そこでお茶碗を洗って
いるのはわたし
(小さいわたし)
袖が流れに浸ってしまって
小さなお魚も集まって
指先を
すり抜けて
(それはきのうのこと)

畑で草をむしっている
地面に向かって真っすぐに
むしりにくい この草め
すると
空が凹にくぼんで
何かしら逆さまに
滑り落ちてくる気配
だから
キッチンに戻って
窓からしばらく
雲を伺っている
心を冷ましている

(雲とわたしと
 きのうのお魚と
 三角形)

夜のお布団の中で
むしった草を小川に落とします
流れの真ん中の
騒がしい渦のあたり
雲の崩れる先のあたり
お魚がひどく跳ねている
草が素早く流れている
天井は低く しんとして
そのあたりに
さびしさが置いてきぼりです
背中の後ろのほう
下のほう

思い出すのは
稲穂を踏む
風の足


自由詩 キッチンの茶色いテーブルの下を Copyright オイタル 2022-09-08 15:25:12
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