薄明の中で(十)
朧月夜
「そうだ。わたしには敵が多い。だから、エイソスだけは味方につけておきたい」
「エイソス・ギザ・ノールデン。奴は、貴族の家系でしたね?」
「ああ。だからこそ信頼がおける。いや、そうではないな。
国家のために、命を捧げられる者だと、わたしは思っている」
「あなたが、国家の未来を何よりも慮っている、ということは存じております。
ですが、エイソスをそれほど信用しても良いものでしょうか?」
フランキスのその言葉は、何よりもクールラントの聖騎士のものだった。
「わたしには、お前がいれば良いのだ、フランキス」クーラスは続ける。
「わたしは、エイソスをエインスベルとアイソニアの騎士に対する、
刺客として用いたいと思っている。クールラントの力が半減するとしてもだ」
「それはまた、大胆な……エイソスはアイソニアの騎士の友人ではなかったのですか?」
「それは過去の話だ。エイソスは、アイソニアの騎士に恨みを持っている」
「それも初耳です、クーラス様。いかなる計画を持っていらっしゃるのですか?」
「エイソスとアイソニアの騎士の妻を、誘拐する」クーラスは答えた。
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クールラントの詩