薄明の中で(八)
朧月夜

「では、あなたの手でそれを確実なものとすれば良いのです」と、フランキス。
「いや。すでに遅すぎる。お前はこの国、クールラントの未来をどう思っている?」
「それは、ライランテの覇者となることです。この国を治め、大陸を治め、
 そして世界の統率者となるのです。この国より秀でた国など、この世界にはありません」

「それは傲慢だな。わたしはそれほど愚か者ではない。
 世界を統べるには、神にも等しい意匠が必要となるのだ」クーラスは言った。
「意匠……それは信仰のようなものですか?」
「そう言っても良い。要は、民に心のパンを与えるということだ」

「心のパン……。いささか難しい問題ですね。クールラントの民の中には、
 いいえ、この世界の民の中は、明日の食事にさえ困窮している者がおります。
 そんな民を救うための策など、未だこの世界には存在していないのです」

「そうだ。それ故にこそ、争いが起きる。次の戦争は間近に迫っていると、わたしは思う」
「そうなのですか? わたしは何も聞いてはおりませんが……」
「それもそのはずだ。次の戦争は、個人の思惑が起こす戦争なのだからな」


自由詩 薄明の中で(八) Copyright 朧月夜 2022-09-01 00:49:36
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クールラントの詩