one last night
mizunomadoka


納屋に吊したニンニクとタマネギを取りに行く
作業台から微かに火薬の匂いがする
もう銃には触れないでとあれほど言ったのに

あなたはすまなそうに謝る
反省してないのは分かってる
「でも定期的な整備だけは必要なんだよ。
もしものときのために」
ほらね?

寝苦しくて窓を開ける
室内と変わらない熱く湿った空気
虫たちの繁殖に最適な夜

新しいメッセージがあります
七日間の断食ツアーに飛行機で行った娘から
全員が服を裏返しに着て笑ってる写真が届く

「ニガシテクレテアリガトウ」

幼なじみの門番に感謝の言葉を告げる
夜の城外には魔物も多く
追っ手は朝までかかるだろう

歓迎するような赤い月
墜落した飛行機の翼に
牛鬼が立っている

森の入り口で鎖を外し
廃棄された採石場のプレハブに入る
入り口の砂で返り血を落とす
生きるための代償

あなたは私に銃を向けた
「すまない。でも君はもう人間じゃないんだ」
「これがもしものとき?」

目が覚めると口の中に砂
あなたの血







自由詩 one last night Copyright mizunomadoka 2022-08-26 20:28:41
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