ヨランの挑戦(五)
おぼろん

「旅は、まだ始まったばかりですよ? アイソニアの騎士様。
 そうは言っても、エインスベル様の命のことを考えれば、
 それほどのんびりもしていられますまいが……」ヨランが悩んだような表情で言う。
「俺には、お前こそがのんびりしているように思えるがな」と、エイミノア。

アイソニアの騎士は、慎重そうな顔を崩さずにいた。
(このヨランには、知恵がある。一緒に旅をしていた時、
 俺はそのことに気づかなかった。むしろ、なぜエインスベルが、
 このような盗賊風情を重用しているのか、分からずにいたのだが……)

今この時にあっては、自分たちが頼るべきは、この間抜けな盗賊なのだと、
アイソニアの騎士も次第に分かってくるようであった。
三人は神殿を出る。そこに広がっていたのは、目を疑うような光景だった。

「何だ、これは? 空が降っているのか!」エイミノアが大きな声を上げる。
上空に浮かんだ雲から、何かの建物のような構造物が突き出している。
その空が不意に変化し始めた。そして、はるか宇宙の星雲のように、七色に輝く。


自由詩 ヨランの挑戦(五) Copyright おぼろん 2022-08-23 01:55:51
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