自嘲詩人ですみません。
室町

いえ、あの、わたし自身は自分が詩人なんて思ったことは一度もありません。
詩を書きはじめたのが遅い上、だれかに褒めてもらいたいという意識が
地道な努力よりも先行しまして、
ちゃんとした詩がなかなか書けない。
ですから
「おれは詩人だ」なんて夢にも思ったことがありません。
でも、おれは詩人だと名乗れたらちょっとかっこいいかもと思っている人がいるの
ではないでしょうか。
詩人は多くの人におって職業ではないから、ほんとうはこんなことなんかないのでしょうけど
ピアノなんかが静かに流れている洒落たバーで
よもや話をしていたバーテンとの会話がふととぎれ、尋ねてくる。
「お客さま、失礼ですがお仕事は」
「いやあ、恥ずかしい。あまり自慢できるものじゃ」
「ご謙遜を」
「世の拗ね者ですよ。無用な存在です」
といいながら、ほとんど射精寸前の歓喜に酔いしれている。
「ぜひ、お聞かせ頂けませんでしょうか」
「ほんとう? 軽蔑しません?」
といいながら、ほとんど失神寸前の鼻息。
もうひと押し。あきらめないで尋ねてくれ。
「なにかクリエィテブなお仕事の関係では?」
ここでよろこびを押し隠してつまんない表情。
「じつは、詩なんか書いてるんですよ」
詩を! 
敬意と羨望のこもった静かな驚きが周囲にひろがる。
ぼくちゃん詩人なんでぇ~す。目がもうヨダレ状態で周りの気配を伺っている。
だれかいいひとが寄ってこないかなあ。あ、あの方、
詩人と聞いてぼくに流し目を送っているような?
じゃあ、ヘッセでも語ってあげようかな。それともマンがいいかな。
......というのはとんでもない妄想でして
一昔前ならともかく
実際には今どき、詩人などといえば無言の袋叩きにあうでしょう。
憫(びん)笑と軽蔑の空気がそこを支配します。なぜかというと
一般の人たちが厳しい選別を抜けてきた作品が掲載されている詩誌を買う
などということがないので、
この時代、偶然、詩を目にするとすればネットの投稿詩でしょう。
そのお粗末さ、悲惨さ、愚かさ、空疎さ、幼稚さ、
情けない愚痴を書いて慰めてもらっている自己陶酔のかぎりをみて
肥溜めに間違って足を踏み入れてしまった悔しさに歯ぎしりするのでは
ないかと心配するほどです。
詩誌の場合はなんかわけのわからんこと書いてやがるなあで済むのですがね。
ネット詩の功罪なんて言葉よく聴きますが、功罪じゃありません。犯罪です。
まともな詩的才能を持った人々を無視することでむしろ詩的才能をこれでもかと
ふみにじり
外部に跳ね除けている空間です。
詩人なんて口が裂けてもいっちゃいけません。
自称詩人いや偽称詩人、または苦笑詩人? .......本人が気づいてないだけで、
それはいまのところ変態や異常者の別名となっております。ほんと。
でもね、
そういうことがわからない方が多いのです。
べつの見方をすればそういう人たちだからネット詩を書くのでしょうけど。
どうもわたしもそのおかしな人間の部類に入るらしくて、
ときどきですが、自称詩人ではなく、ひょっとしたらおれこそ本物の詩人じゃないだろうか
と本気で思うことがあるのです。
自己評価ではありません。もちろん他者にそう認めてもらったわけでもない。
なんというか天啓? そう、自分や他者を離れたところからおまえは詩人だと啓示されるのです。
おまえは詩人だ。そういう声がどこか上のほうからとんでくる。
どうやら
わたしはほんものの詩人らしいのです。
すみません。
ほんとうにすみません。キリッ*
でも、
こうなったらおしまいですよ。
これは改定版ですが、改定前の詩を帽詩のサイトに投稿したところ
そこの運営の方から基地外扱いされました。
そこはマナー大事をうたっているところですが、なにも基地外扱い
しなくてもいいのにねえ。
でも自らおしまいだと自嘲しているのですから
なにをいわれても文句いえません。
みなさまも思い切り罵倒してください。じゃあ。





自由詩 自嘲詩人ですみません。 Copyright 室町 2022-08-18 16:00:22
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