盗賊ヨランとの契約(五)
朧月夜

「意外な人物だと? それはまさか、エインスベル……」アイソニアの騎士の心が騒ぐ。
「どうぞ、お焦りなさいますな。それは、エインスベル様ではありません。
 彼女の生存の如何は、この旅の結果として現れてくるものです。
 まさしく、すべては運命の結果なのですが……」ヨランは、ついと横を向く。

「じらすな! 盗賊ヨラン!」アイソニアの騎士は、声を荒げる。
「じらしているのでは、ないのです。アイソニアの騎士よ。
 ただわたしは、人間の無力さというものを嘆くばかりです。
 それは、あなたも同じですよ、アイソニアの騎士よ」ヨランは、うそぶく。

「あなた様は、この世界が変わるところを見てみたいとは、お思いになりませんか?
 わたし、あなた、そしてエインスベル様、この三人でです」
「ふっ。そのようなことを言えば、そこで不快に思う御仁がいるのではないか?」

「わたしのことは、お気になさいますな。アイソニアの騎士よ」エイミノアも口を挟む。
「良かろう、わたしはお前と契約する。エインスベルのため。いや……
 この世界を変えるためだったか。血塗られたこの命、そのようなことに捧げるのも悪くない」


自由詩 盗賊ヨランとの契約(五) Copyright 朧月夜 2022-08-14 18:02:21
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