盗賊ヨランとの契約(五)
朧月夜
「意外な人物だと? それはまさか、エインスベル……」アイソニアの騎士の心が騒ぐ。
「どうぞ、お焦りなさいますな。それは、エインスベル様ではありません。
彼女の生存の如何は、この旅の結果として現れてくるものです。
まさしく、すべては運命の結果なのですが……」ヨランは、ついと横を向く。
「じらすな! 盗賊ヨラン!」アイソニアの騎士は、声を荒げる。
「じらしているのでは、ないのです。アイソニアの騎士よ。
ただわたしは、人間の無力さというものを嘆くばかりです。
それは、あなたも同じですよ、アイソニアの騎士よ」ヨランは、うそぶく。
「あなた様は、この世界が変わるところを見てみたいとは、お思いになりませんか?
わたし、あなた、そしてエインスベル様、この三人でです」
「ふっ。そのようなことを言えば、そこで不快に思う御仁がいるのではないか?」
「わたしのことは、お気になさいますな。アイソニアの騎士よ」エイミノアも口を挟む。
「良かろう、わたしはお前と契約する。エインスベルのため。いや……
この世界を変えるためだったか。血塗られたこの命、そのようなことに捧げるのも悪くない」
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クールラントの詩