閃光と跳躍と(四)
おぼろん

その時のオスファハンの怒りは、静かながらすさまじかった。
それは憤激とも、恩讐の念とも言えるものだったろう。
ライランテ戦争の際に、エインスベルが放ったヒアシム・カインの魔法。
それをまだ、オスファハンは恐れていたのだった。

(エインスベルの存在は、第二次ライランテ戦争の火種になりかねない。
 エインスベルに比べれば、アースランテやファシブルの動向、
 そして、祭祀クーラスの暗躍ですら、可愛らしく思えるほどだ)
老オスファハンは、これまでの我が身の人生は何のためだったのか、そう感じていた。

「しかし、そこには親子の情もありましょう?」ヨランが訊く。
「エインスベルは、マリアノス・アリア・ガルデの娘。もう、わたしの娘などではない」
そこには、まるで世の成り行きを受け入れてしまった、という諦観があるようにも感じられた。

傍らで、傭兵であるエイミノアは剣の柄に手を添えて、身構えていた。
(この者たちは、果たして味方なのか、敵なのか。悠長に何を話している?)
盗賊ヨランは、オスファハンに対して頭を振った。そして、ぱちりと指を鳴らす。


自由詩 閃光と跳躍と(四) Copyright おぼろん 2022-08-08 00:18:50
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クールラントの詩