帰省
mizunomadoka


掴めそうに濃い影
昨日の残骸の
花火を拾う
お前たちだけが残って
火をつけた奴らは
消えてしまったのね

川に足をつける
彼女が対岸を指さす
先週あそこで中学生の女の子が溺れて死んだんだよ
ドローンがいっぱい飛んで探してたって
一緒に手を合わせる

そうだ上流にね、新しいシャーベット屋さんができたんだ
潰れちゃう前に行ってみよ?
スマホの中で
透き通るように飾る14フィルターの私たちと
オーロラシャーベット

夜勤の母を見送り
誰もいない実家
ベッドしかない私の部屋

花火大会の日
市民ホールの練習室で録音した
雑音だらけの歌声
アイス勝負に勝った
ジョーカー込みのツーペア

私たちの心の中にはもう一つの世界があって
そこには誰もたどり着けないらしい

今日のことを思い出しても
戻れないように

私たちは夏の半券みたい
片側だけ連れ去られて

消えない
いつまでも
残されて







自由詩 帰省 Copyright mizunomadoka 2022-08-01 20:23:18
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