地下室のヨラン(二)
おぼろん

「なんだと! お前はそれを知って、黙っていたというのか?」
エイミノアの怒りは、さらに激しくなった。
「はい。わたしどもがここに捕らわれた、そに日のうちに」
「それを我に隠していたというのか!」エイミノアはさらに息まく。

「そこから、今すぐに脱出するのだ、盗賊! 早くにだ!」
エイミノアはねめつけるように、ヨランを見据える。
「まあまあ、エイミノア様。お怒りをお鎮めくださいませ。
 これはきっと、オスファハン殿も知らない抜け穴なのです」
 
「それはどういうことか?」
「オスファハン殿が、この屋敷に引っ越してきたのは、およそ一年ほど前です。
 当のオスファハン殿は、この抜け穴を知らない可能性もあるのです」

「なんだと?」エイミノアは、疑念に眉を歪ませた。
「この抜け穴は、オスファハン邸の書庫に通じておりました。
 おそらく、この部屋は牢獄ではないのです」ヨランがまた微笑する。


自由詩 地下室のヨラン(二) Copyright おぼろん 2022-07-23 19:41:21
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩