地下室のヨラン(一)
おぼろん

ヨランとエイミノアが、オスファハン邸の地下室に捕らわれてから、
およそ三日の日にちが経った。
エイミノアは憮然としている。
それもそのはずだ、ヨランはいっこうに動こうとしない。

「おい盗賊、何をしているのだ?」
「おい盗賊、俺たちはいつまでこうしているのか!」
苛立ちに満ちた声を、エイミノアはヨランにぶつける。
「まだまだです。エイミノア殿」ヨランはうそぶく。

「間抜けな奴め、むしろ怒りに駆られるほどだ。
 エインスベル様は、今この瞬間にも危機に陥っているのだぞ?」
「先達ても申しましたでしょう。エインスベル様は無事です」

「それよりも、これをご覧ください」ヨランが部屋の一角を指さす。
「何もないではないか、盗賊!」エイミノアは、拳で壁を叩いた。
「違います。これは抜け穴です。おそらく密偵用の」


自由詩 地下室のヨラン(一) Copyright おぼろん 2022-07-22 18:57:32
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