おもいで
ひだかたけし

静かな鼓動の海
満ち欠けを繰り返す月影
わたしは独り泳ぐ
途方に暮れ
静謐に身を委ねながら

遥か死の彼方から降って来る霊性は
たましいを震わせ
遠いおもいでへ導く

そこには自由になろうという意志がある
そこにはあらゆる束縛からの飛躍がある
そこには遠い故郷を臨んだ感触がある

あれは暑い夏の日、
森をさ迷っていた
わたしは多彩な蝶の舞いを見た
森から湧き出てくる優美な生命たち

海は凪いでいる
わたしは独りひたすら泳ぐ
途方に暮れ
静謐に抱かれながら

黄昏が近付く
暮れゆく空に霊性が木霊し
わたしの魂は震える
死の墓標を刻んで
わたしの魂は震える

ざわめく街角に
満ち欠けを繰り返す月影が映る









自由詩 おもいで Copyright ひだかたけし 2022-07-20 20:03:10
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