金貨
やまうちあつし
おかえり
やってくるものたちよ
君らのことは
昔から知っていた
真っ赤な顔して
小さな手足をぐーぱーしていたころから
思えばそのころ
宇宙のすべてを知っていたはず
だんだん忘れたわけなのだ
生活のことや欲望のことで
いつしかいっぱいになり
おかえり
初めてやってくるものよ
あらゆるものは
決められたところに戻るだけ
だからなつかしい
忘れると思い出すとは
大事な金貨の裏と表だ
泣くことはない
笑うほどのことでもないけれど
ただ
手を振るといい
おかえり
二度とはまみえぬものたちよ